七瀬なな小説閲覧室「お題の間」

□ お題『宝石』20【トルマリン】 □

『トルマリン』第二話

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というわけで、演劇界に殴りこみをかける気まんまんのサファイアですが、そのまえに「間男」とののしられ、殴りこまれますw
サファイア、男装してますが、じつは女性なんですけど^^;
のっけからいきなりピンチのヒロイン、どう乗り切るのか?

本文は↓からどうぞ♪


『トルマリン』第二話


「これはこれは男爵殿、
 奥方様にはいつも当店をご利用いただきまして、
 誠に、有難う存じます」
「決闘だ!」

 愛想よく立ち上がって歓迎するサファイアの頬を、
 闖入者の白手袋が、張り飛ばす。

「サファイア!」
 クリスタルの叫びと、ご婦人方の悲鳴が、交錯。
 店内に不穏な空気が漂う中、
 当のサファイアだけは、動じない。

「今宵はどうやら、
 込み入ったお話がおありのようですね。
 奥で伺いましょう、さあ、こちらへ、どうぞ」

 おびき出すかのように先へ立ち、奥の間へ。
 招かれざる客が、いきり立って、後を追う。

 腰を浮かせたクリスタルの肩に、
 通り過ぎざま、手をかけて、
「きみは、この場を」手短に、指示。

 クリスタルは頷き、
 指揮者に指を鳴らして、合図を送る。

 指揮者はそれに応じ、
 今までの、会話の邪魔にならないような、
 静かな伴奏から一転、
 軽快な舞曲を奏で始める。

 従業員一同、心得たもの。
 連携は、しっかりと、できている。

 なにせ、珍客に怒鳴り込まれたのは、
 これが初めてではない。
「間男の仕立屋」は、ほとんど決まり文句。

 給仕係は手拍子を取り、
 接待係は輪になって踊り出す。
 単純で素早い足さばき、楽しげな嬌声。

 曲のシメには一人一人の踊り手が、
 とっておきの笑顔と見栄を決める。

 ドッと拍手が、巻き起こる。

 次の曲では、ご婦人連れでない男性客を、
 接待係の女性が踊りに誘う。
 女性連れの客も、
 手を取り合い立ち上がって輪に加わる。

 三曲目。
 さすがに皆、息が上がってきた。
 ゆったりとした曲調へ変えるよう、
 クリスタルは指揮者へ、合図。

 一休みしに、あるいは喉を潤しに、
 輪を離れる一群あり。
 続けて寄り添い踊る男女あり。
 この曲ならば踊れそうだと、
 おもむろに加わる一群も、あり。

 各々、自由にくつろぎ、楽しむ。

 陰で采配を振るいながら、
 クリスタルはひとり、気を揉む。

 遅い。
 手こずっているのか、サファイア。

 もうすぐ三曲目が終わる。
 四曲目が始まってもまだ出て来ないなら、
 奥の間へ踏み込む決意を固めた、矢先。

 サファイアと男爵が、奥の間から姿を現した。
 肩を並べて歩く様子は、まるで、旧知の友。

「今度、改めて食事でもどうかね」と男爵。
「有難う存じます」とサファイア。

 出口まで男爵を送り、スッと右手を差し出す。
「正々堂々と、戦いましょう」

 差し出されたサファイアの手を握り、
「よろしい、負けませんぞ」
 嬉々として、男爵は、受けて立つ。

 上機嫌で男爵が去った後。
「まさかサファイア、決闘を?」
 クリスタルが血相を変えて、走り寄る。

「やだなあ、さっきのは決闘の話じゃないよ。
 例のあれさ、演劇界に殴りこみ。

 男爵は大劇場の出資者のひとりで、
 大の芝居好きだからね、
 ぼくがこれからやろうとしてることに、
 とても興味を持ってくれたのさ」

「それで、奥方の件は?」
「ああ、それなら解決したよ。
 ことを分けて説明したら、納得してくれてね」

 クリスタルは、ほーっと長いため息をつき、
 胸を撫で下ろす。

 緊張が解けると、
 毒気を含んだ言葉が自然と口をつく。
「また舌先三寸で、丸め込んだんだね」

「ずいぶん辛辣だねえ兄弟、
 誠心誠意の説得が功を奏したと、
 言ってくれないかな」

「どうだか」
「ふふふっ」

 ふたりは何事もなかったかのように、
 席へと戻り、杯を傾けつつ、
 細かい話し合いを続けた。



≪トルマリン第三話へ≫


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Date:2007/05/26
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UserTag: 宝石  お題  小説  サファイア  クリスタル 
Thema:お題
Janre:小説・文学

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